南オーストラリアの高齢者総合サービスプロバイダーであるECHにおいて研究部長を務めるコーネル氏が「日本における新しい高齢者の住まい方」について調査研究を行うため、7月29日~8月3日、日本に滞在した。
ILC-Japanは、7月30日(土)と8月2日(火)の視察をコーディネートした。
7月30日(土)Jikka House(伊豆高原)取材
8月2日(火)町田市高齢者住宅視察
☆Jikka House取材内容は以下の通り
東京で精神障害者の作業所で高齢者向けに配食サービスを長く行ってきた仲良し女性2人組、信子さん(73歳)と幸子さん(65歳)。「老後は気候の良い場所でゆったりと自分たちの好きな料理の腕をふるって地域住民の人と触れ合いながら過ごしたい」という思いから7年前に伊豆高原に移住。「Jikka」という住居兼レストラン兼地元の一人暮らし高齢者向け配食サービスを始めた。Jikkaとはつまり「実家」。英語では”Where my heart belongs”と訳している。
伊豆高原駅からタクシーで10分ほど。山の中腹にひっそりと入口の案内が出ているのみ。急な階段を昇っていくと見えてくる特徴的なとんがり屋根の住居は建築家の信子さんの息子さんが設計。コロボックルの家を訪ねるかのようなわくわく感がある。
将来介護が必要になっても、車椅子生活になっても好きな料理をし続け、住み続けられる工夫が随所に設けられている。特に風呂は独創的でアーティスティック。螺旋状になっていて車いすのまま入浴できる仕組みになっている。
メディアではCNN,BBCがいち早く取材し、世界的に有名になった。 基本的に配食サービスは土曜日の夕食のみ、ランチは木曜日と金曜日に営業。市場でその日手に入った食材で何を作るかを決めているため、訪れるまでメニューはわからない。「実家のご飯とは手間暇かけたお料理のことよ」と信子さんが言うように、ランチのある日は朝4時から仕込みを開始する。2人が作る世界の家庭料理は盛りだくさんでカラフル。食材は地元の農園で育てられた無農薬の旬の野菜や果物を中心に、伊豆の海で採れる魚介類や地元産の伊豆牛など、地産地消の考え方を大切にしている。
採算度外視の大サービスランチは前菜からデザートまで3時間をかける。SNSやHPは一切ない。配食サービスもレストランのお客さんもすべて口コミで広がった。「だってよくわからないんだもの。それに、2人しかいないから、あんまりたくさん来られても困っちゃうの。このくらいでちょうどいいのよ。」と二人は口をそろえる。
この地域は、昔からの住民に加え、毎年5月に開催するアートフェスティバルの影響もあり、別荘地には都市部から移住してきたアーティストも多く住む。レストランは時にアーティストたちのワークショップの場にもなる。
縁のなかった人同士がJikkaを拠点につながり合い、支え合う関係が育ちつつある。将来は結果的にここがデイサービスのようなところになればいい。でも、公的な補助金などは要らないと2人は語る。自分達の好きなことを好きな場所で好きな人に提供して喜ばれることが何よりの喜び。だから無理のない形でできる範囲のことしかやらない。 ここに集まるお客さんたちは得意分野を生かしてレストランに自らの作品を置いて展示したり使ってもらったりもしている。足が少々悪くても、おいしいもの食べたさに頑張って山を登ってくる87歳の男性もいた。 おとぎ話のような空間に世界の料理を食べにくるのだからお客さんもみんなおしゃれに余念がない。これぞプロダクティブ・エイジング。みなさんのにこやかな顔が印象的だった。 https://www.youtube.com/watch?v=cpmPuzTyIZE https://www.youtube.com/watch?v=Rb9vAFEXtRk |
奥でエプロンを付けて立っている二人、右が須磨信子さん、左が藤岡幸子さん 取材をしたVictoriaさんとILCスタッフ |
☆町田市高齢者住宅視察スケジュールは以下の通り。
時間 | 視察先、施設種別 | 施設の特徴 | 備考 |
---|---|---|---|
09:40 | ・車いす用に改修した高齢者住宅見学 ・町田市住宅改修アドバイザーによる説明 |
・車いすを利用している方が一人で自宅で暮らせる工夫、改修事例 | 町田市「住宅改修アドバイザー事業」は、既設の高齢者宅をバリアフリー化する際、適切な改修を目指して建築士・リハビリ専門職が高齢者宅を訪問・確認しアドバイスを行う事業。 |
11:30 | ・サービス付き高齢者向け住宅「清住の杜」訪問 |
・高齢者向けバリアフリー住宅。ここから徒歩3分の場所に認知症対応グループホーム、認知症対応デイサービス、ショートステイ、相談窓口等を運営。 | 理事長、施設長は地元住民。地域活動に認知症の利用者と参加したり、住民の特技を生かしてコーラスや漢字検定等のイベントを企画。 |
12:40 | ・グランハート町田 | ・医療・介護複合施設内に設置 | 福祉団体と民間企業が協働で7年前に開設した医療・介護・福祉の拠点。 |
13:40 | ・軽費老人ホーム(A型)「町田愛信園」・特別養護老人ホーム「福音の家」 ※運営は社会福祉法人福音会 | ・軽度者、低所得者向け老人ホームと公的介護付き老人ホーム。 ・施設全体は複合施設(訪問介護、デイサービス、ショートステイ、相談窓口など)である。 |
キリスト教系の医師たちが約40年前に創設。市内初のデイサービス、在宅介護センターを運営した法人。 |
15:00 | ・高齢者賃貸住宅(鶴川地域コミュニティ・リレイス鶴川) ※運営は(株)リレイス |
・バリアフリー化されているが要介護者向けではない。同建物内に以下の機関がある。 ・鶴川第二高齢者支援センター(地域包括支援センター) ・障がい者支援センター ・ケアフルクラブ悠々園(介護予防施設) ・コミュニティカフェ・リレイス ・法ジョン看護ステーション悠々園 |
・リレイス鶴川は2つの社会福祉団体、1つの株式会社が入る地域拠点。そのうちの1つの社会福祉法人のオーナーは地域住民。 ・障がい者支援センターは町田市独自の取り組み。高齢者支援センターに近い仕組みを障がい者対象に行う相談窓口。 |
16:40 | 近隣施設を車中より見学、紹介 | ・看護小規模多機能型居宅介護施設「ナーシングホーム岡上」 ・若年性認知症向けデイサービス「DAYS BLG」 ・住民要望により創設された福祉拠点「ケアセンター成瀬」 ・障がい者福祉的就労機関等 |
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