シンポジウム

認知症に関する国際シンポジウム
認知症のグローバル化:課題と対応(2010.10.26)

認知症に関する国際シンポジウム10月26日、ケープタウンのパビリオン会議センターにおいて、ILC-南アフリカおよびILCアライアンス主催によるシンポジウム「認知症のグローバル化:課題と対応」が開催された。ILCアライアンスの各センターの代表者は分担して発表を行い、南アフリカの政府、医療、福祉関係者、報道機関などが多数参加した。

シンポジウムでは、「第1部:課題と問題提起」において現状の報告と問題点の指摘が行われ、また「第2部:対応と実践」で具体的な対応例の紹介と提案が提起された。そしてシンポジウムの最後に「ILCアライアンス 認知症のグローバル化への対応に関するケープタウン宣言」が提起された。

認知症に関する国際シンポジウム
認知症のグローバル化:課題と対応

第1部:課題と問題提起
(進行)モニカ・フェレイラ(ILC南アフリカ理事長)
・発表(1)「今後の人口学的課題と認知症マネジメント向上の緊急性」
ハンス・グロス(ファイザー株式会社CEO/World Demographic and Ageing Forum 理事)
・発表(2)「認知症の課題、イギリスにおける政策と実践」
サリー・グリーングロス(ILC英国理事長)
・パネリストによる発言(ILCアルゼンチン、ILCインド)
第2部:対応と実践
(進行)サリー・グリーングロス(ILC英国理事長)
・発表(3)「フランスのアルツハイマープランは事態に対応できるか?」
フランソワーズ・フォレット(ILCフランス理事長)
・発表(4)「南アフリカに見る発展途上国の認知症への対応」
セバスチアナ・カルラ(ILC南アフリカ理事)
・パネリストによる発言(ILCイスラエル、ILC日本、ILCオランダ)
討議・総括 メアリーアン・ツァオ(ILCシンガポール理事長)
・「ILCアライアンス 認知症のグローバル化への対応に関するケープタウン宣言」提案
オサコ・マサコ(ILCグローバル・アライアンス事務局長)

冒頭の「今後の人口学的課題と認知症マネジメント向上の緊急性」と題する発表でハンス・グロス博士は、今世紀の半ばまでに世界の高齢者は20億人を超える見通しを示しながら、認知症がもたらす社会的・経済的な課題は世界のもっとも重要な課題になるだろうと指摘した。
そして国家単位のまた世界規模の認知症戦略が必要とされており、高齢化率の最も高い日本が今後も重要な役割を果たしていくことに期待を表明した。

認知症に関する国際シンポジウムまた、サリー・グリーングロスILC英国理事長とフランソワーズ・フォレットILCフランス理事長はそれぞれ、イギリスとフランスにおける「認知症の人と介護者のQOLの向上」「研究の充実」「認知症の問題をヨーロッパにおける最優先課題とすること」などを内容とする認知症に関する国家戦略の内容を説明し、今後さらに取り組みを充実させていくと発言した。

セバスチアナ・カルラILC南アフリカ理事は、南アフリカの高齢女性は、社会的、経済的、政治的分野の多くで差別されている上に、深刻な感染症(特にHIV/エイズ)の蔓延や、医療へのアクセスの悪さに直面していることを報告した。

認知症に関する国際シンポジウム発表者以外のパネリストは主にそれぞれの自国の経験を紹介した。日本からは「認知症を知り地域をつくる10カ年」「認知症でもだいじょうぶ町づくりキャンペーン」の経験を説明し、国民的キャンペーンを行うことと地域で認知症の人を支えることの重要性を強調した。

最後の討議と総括では、長期介護についての世界をリードする介護保険制度を確立し、地域づくりを重視する国民的なキャンペーンを進めている日本の努力が高く評価された。あわせて、社会全体で問題に取り組むために認知症についての国家戦略の重要性も確認された。

シンポジウムの最後に、オサコILCグローバル・アライアンス事務局長から「ILCアライアンス 認知症のグローバル化への対応に関するケープタウン宣言」が提案され、参加者全員の賛同を得た。

ILCアライアンス 認知症のグローバル化への対応に関する
ケープタウン宣言(抄)

国際長寿センターアライアンスは、認知症の人と家族そして介護者の権利を守るために、各国、市民社会、学界、コミュニティ、各個人に対して以下の行動を呼びかける。

  1. 予防、診断、治療の標準フレームワークを確立するための学際的討議を行うこと
  2. 認知症に関する各国及び国家の枠を超えた総合政策の推進、実施をすること
  3. 認知症の全局面と介護についての各国政府あるいは民間の研究費増額を応援すること
  4. 認知症について教育を受けたヘルスケア専門家を増やすこと
  5. 認知症予防をめざす教育活動を発展させること
  6. 認知症ケアモデルを確立すること
  7. 社会団体が行う認知症の人とその介護者のための提言やサービス提供を支援すること
  8. 認知症の人のインフォーマル介護者を支援すること
  9. 認知症高齢者を含む高齢者の権利擁護のための国連会議を支持すること

なお、本シンポジウムの詳細は、IFA(国際高齢者連盟)の機関誌「グローバル・エイジング」の特集号(2011年6月刊行予定)に収録される予定である。

 

(参考)

「今後の人口学的課題と認知症マネジメント向上の緊急性」ハンス・グロス
Future Demographic Challenges in Europe:The Urgency to Improve the Management of Dementia (Dr. Hans Groth)PDF

「認知症に関する国家戦略」イギリス保健省
National Dementia Strategy

「アルツハイマー・プラン(2008-2012)とは何か?」フランス政府
Qu’est-ce-que le plan Alzheimer 2008-2012 ?

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