国際交流

ILC-UKより調査研究代表団が来日し、新総合事業に向けた生活支援・
介護予防について自治体やNPOなどを視察訪問しました。(2017.5.15〜18)

日本における高齢化対策の最新動向を調査することを目的に、ILC-UKより3名の調査研究代表団が5月15日から1週間の日程で来日しました。
ILC-Japanは、新総合事業に向けた生活支援・介護予防を中心に自治体やNPOなど、4日間の訪問先をアレンジし、調査に同行しました。

■来日者
 Dr. Brian Beach (主任研究員)
 Dr. Sally-Marie Bamford(研究・戦略部長)      
 Dr. George Holley-Moore(研究・政策マネージャー)

【訪問スケジュール】

5月15日(月) <日本の現状と課題を知る>

時間 内容
13:00 ILC-Japan水田代表以下スタッフとの打ち合わせ
15:00 訪問先の概要説明と視察のポイント 
   澤岡詩野(ダイヤ高齢社会研究財団主任研究員)
15:30 日本の高齢化の現状と課題  
   小野太一(政策大学院大学教授)
17:30 ILC研究委員との意見交換
   29年度研究(ケアマネジメント)について
18:30 終了

5月16日(火) <地域で暮らす 互助の力>

時間 内容
10:00 江戸川区役所 熟年者生きがい施策説明
   斉藤猛(江戸川区副支部長)
11:00 江戸川総合人生大学 視察       
   森本磨岐子(江戸川総合人生大学推進室長)
13:30 「NPO法人 なぎさ虹の会」視察
   松島なをみ(なぎさ虹の会事務局長)
16:00 地域の居場所「なごみの家 松江北」視察
   小沼光歩(江戸川区福祉部福祉推進課計画係長)
   小嶋亮平(なごみの家松江北 主事)
16:30 終了

〇江戸川区役所

1960年代から子育て支援や高齢者福祉に力を注いできたことから「福祉の江戸川」と呼ばれている。
要介護者だけでなく、元気な高齢者への生きがい施策に約30年前から取り組んできた。高齢者を「熟年者」と呼んでいる。

  • くすの木クラブ(老人クラブ)
  • リズム教室(老人クラブを中心とした、社交ダンスをアレンジした軽運動活動。毎年6月に約5千人が参加する大会を実施)
  • くすのきカルチャー教室(区内6か所のカルチャーセンターで様々な趣味や学習の講座が開催。)
  • 江戸川熟年人材センター(シルバー人材センター 1975年に日本で初めて設置)
  • 江戸川総合人生大学(高齢者大学。2学部4学科。テーマはまちづくり、国際交流、子ども支援、介護・福祉。2年間30回の授業を3万円で受講。在校生は175名。平均年齢63.7歳。500名以上の卒業生のうち、多くは非営利団体でボランティアとして活躍。)

〇なごみの家

地域包括ケアシステムの拠点として2016年にスタート。社協が運営。
区内3か所に設置。29年度さらに1ヵ所開設予定。

  1. 何でも相談(相談員や医療関係者などの専門家による相談対応)
    土日も開館(月曜休館)。訪問も可。
    相談内容は、生活、介護、健康、子育て、その他多岐にわたる。
  2. 地域のネットワークづくり
    町会・自治会、医療・介護関係者、民生・児童委員、警察・消防などが協力し、地域の支え合い・助け合いの支援を行う
  3. 居場所・通いの場
    誰もが気軽に立ち寄っておしゃべりできる地域交流の場
    小学生から高校生を対象に、学習支援(毎週土曜日午前中)や食事提供(子ども食堂:月1回開催。子ども100円 大人300円)も行う

〇NPO法人「なぎさ虹の会」

駅から遠く高齢化の進むニュータウンで、困った時に助け合える地域を住民自らの手で創り上げている。

  • 1975年に建設され、現在、約1300世帯が居住。高齢化率30%。
  • 1999年に自治会と住民有志で虹の会を集合住宅内に設立。
  • 生活支援や子育て支援の他、介護保険事業、生きがい事業を展開。
  • 180名の住民がボランティア(有償・無償)や専従スタッフとして活動。
  • 助成金には頼らず、自治体とは対等なパートナーシップを結んでいる。
  

  「なぎさ虹の会」での折り紙ボランティアによる兜作成

 

5月17日(水) <元気なときから地域とつながり健康づくり>

時間 内容
10:00 横浜市元気づくりステーション「レインボー」視察
   世話人および保健師へのインタビュー
15:00 横浜市元気づくりステーション事業の説明
 横浜市健康福祉局高齢在宅支援課介護予防担当
 元気づくりステーション事業の効果について
 ―「地域での活動と健康に関する調査」結果から―
   渡邉大輔(成蹊大学准教授)
17:00 終了

〇横浜市の施策「元気づくりステーション」【5/17】

地域の身近な場所で、地域の資源を生かしながら、継続して、介護予防や健康づくりの場を住民が主体となって作っていくことを目的に、行政が運営資金・人的に支援。現在、約240ヵ所で約6千人が平均月2回活動している。

  • 「地域づくり型」と呼ばれ、自治体が主催する健康講座に集まった人をグループ化し、地域の拠点として定着させる。
  • 活動の段階により関与の在り方を代えつつも、地域の保健師・看護師などが運営を支援。
  • 運営や活動プログラムは主体により異なるが、共通するのは、すべての人がグループの運営に何らかの役割をもつこと。
  • ILCが行ったアンケート調査からは、元気づくりステーションの活動を行うことにより、転倒する人の数が減っていることや、活動をしていない人に比べて介護度の悪化が緩やかであること、死亡率も約半分であることが分かっている。
  

  元気づくりステーション「レインボー」での介護予防体操

 

5月18日(木) <認知症になっても社会に貢献>

時間 内容
10:00 「DAYS BLG!」(町田市)視察
 認知症の「働きたい」を叶える次世代型デイサービス
   前田隆行(DAYS BLG!理事長)
17:30 終了

〇デイサービス「Days BLG!」 
  (「Barriers」「Life」「Gathering」の頭文字)

「町田市つながりの開」(前田隆行理事長)が運営する次世代型デイサービス。利用者自らが主役として再び生活者となれるよう、就労を始めとするさまざまな社会参加の場を提供している。 同事業所では利用者のことをメンバーと呼ぶ。

  • 1日のスケジュールはメンバー自らが決める。活動内容は企業での就労、学童への紙芝居の読み聞かせ、食事の買出し、デイサービス内の掃除などさまざま。職員が指示をするのではなく、個々が何をやりたいのか意志を聴くことを基本とし、メンバー同士で話し合って予定を立てる。
  • 就労活動は、デイの利用時間のうち午前中の約1時間。
    主な就労内容は▽ホンダディーラーでの洗車▽コクヨの商品企画▽三菱鉛筆でのボールペン組立て▽保険代理店でのボールペン袋詰め▽学校給食向けの野菜の皮むき――などで、月2,000~3,000円の報酬も得る。
  • 『有償ボランティア』として、介護保険サービス利用中のボランティア活動に対して、報酬が支払われることが認められたのは、2011年4月。起案者となった前田代表が、約5年間かけて厚労省に何度も足を運び、認知症本人の「社会の一員として働きたい」という声を届け、やっと勝ち取った権利。
  • 活動の一つの紙芝居は絵が得意なメンバーが手作りし、学童など地域の子供達へ披露。認知症とはなにか、認知症でもできることなど、自身の体験もふまえて語りかけ、最後に自分たちが実は認知症であることを明かす。
    子供のうちから認知症の症状、行動を理解してもらうことで、認知症当事者にとって生活しやすい地域・社会づくりとしての意義もある。
  • 男性のメンバーが約90%以上。
  

  「DAYS BLG!」認知症のメンバーによる
   ホンダカーディーラーでの車洗浄活動

  

  「DAYS BLG!」スタッフの皆さんと

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