本研究の目的 |
2011年度の理想の看取りと死に関する国際比較研究報告書の刊行にあたり、まず関係者各位の御努力に深い感謝を捧げたい。
これは国際長寿センターILC(日本)が3年度にわたり世界の姉妹センターからの御協力を頂いたことを基盤にして行われたことで、他に類をみない貴重なデータが集積されたことによるものである。
看取りは無益な延命治療をせずに自然の経過で死にゆく高齢者を見守るケアをすることと定義される。しかも、本邦人口の規模が海外諸国と比較すると著しく大きいことが注目される。例えば2010年本邦の65才以上は約2,958万人であるが、これはカナダの総人口数3,411万人にも匹敵する。また高齢者の医療や福祉政策を論ずる際にしばしばデンマークやスウェーデン等の北欧諸国の制度が引き合いに出されるが、それらの国々の全人口は高々560万人~900万人ほどであり、これは本邦の75才以上の後期高齢者数約1430万人に比較してはるかに少ない数と言えよう。従ってサービス提供の内容とそのあり方、あるいは受け手である高齢者の考え方の巾の広さあるいは情報伝達の浸透度等具体的な高齢者への施策の実施については、約3,000万人という対象人口の量の大きさには特有の問題点があることを認識したい。
各国の社会的背景や文化も看取りについて私達の気づきを越えた影響があること、しかし異なった文化をもっていても各国に共通した課題のあることも明らかになった。
これからは"死"を迎えることについて学ぶ事が重要になるだろう。よく生きることは、よく死ぬことにつながる。死生学の普及が市民への啓発活動として重視されるだろう。
長谷川和夫「序文」より |